2013年9月29日日曜日

未来授業広島(2013年9月23日)の振り返り~豊かさとはなにか~



9/23(月)に開催された「三菱商事presents FM festival未来授業」に参加してきました。趣旨としては、若者(主に大学生)が集まり、著名人の講演を通じて将来について語り合う、というもので、詳しくは11月にエフエム広島で紹介されるそうです。

今回は広島大学の長沼先生が「ニッポンの転換点・未来を創る ~協調する人種 ホモ・パックスへの進化」というテーマでご講演いただきました。とても面白く、あっという間の2時間でした。

ちなみに自分は講演を聴いただけで、特に発言をしたわけではありません。授業では「どんどん発表してみよう」と言っているくせに・・・と児童生徒から叱責を受けそうですが(汗)。でも、自分が授業を受ける側に立たないと、発言するときの緊張感や不安は忘れてしまいそうなので、良い機会だったのかもしれません。

その贖罪意識というわけではありませんが(笑)、当日発言できなかったこと、講演後に振り返って感じたことなどを以下にまとめようと思います。この企画は全国各地で行われているようですので、興味をお持ちのかたはどうぞ次の機会にご参加ください。




■ 生態学の知見

・ダーウィンの「生命の樹」

生物学(進化学)において重要な考え方の一つに、「どのような生物ももとは同じ」というのがあります。これは、ダーウィンが「生命の樹」という言葉で表したそうで、様々な種の生物が木の枝にあると考えます。どの生物ももとをたどれば、同じ幹・根から生まれたもののはずで、進化の過程で分かれていったと考えます。

例えばヒト(ホモ族)とチンパンジー(パン族)ももとをたどれば同じ種だったはずです。現に両者のゲノム(遺伝子全体)は96-99%が共通しています。

・わたしたち個体は「遺伝子の乗り物」なのか

もう一つ、講演で紹介された考え方で、「遺伝において継承されるのはDNAのみ」というものがあります。たとえば、mochiという個体が次世代に遺伝として引き継ぐのは、mochiの人格や感情、意識ではなく、彼の遺伝子(性染色体や髪質など?)のみです。mochiがどのような人なのか、という点は次世代には伝わらないようです。

すると、私たち個体の存在意義は、前世代から受け継いだDNAを次世代に運ぶ「乗り物」のような存在なのでしょうか。そこには感情や意識などが果たす役割はないのでしょうか。
長沼先生によれば、最近の考え方ではジーンのみならずミーム(文化)も伝わるとあります。したがって、今日の文化を作り上げることは次世代にも必ず生きていくわけで、意識や感情はこのような点で重要なのでしょう。


■ “The Selfish Genes”~お・も・て・な・し~

リチャード・トーキンズの著作に“The Selfish Genes"があります。"selfish"という単語の連想から、「わがまま」「利己的」というイメージが生まれそうですが、それは著者の意図とは異なり、実際は「協調する」遺伝子という意味に解釈すべきだ、と長沼先生はおっしゃいます。
「情けは人のためならず」ということわざが示す通り、相手に親切にしたり協力したりすることで、生存に有利となるために、ヒトは協力することができるそうです。

少し分かりづらいかもしれないのでキリンの例から補足します。キリンは首が長いのですが、キリンが首が長い理由は「首が長い方が高いところにある草を食べることができるため、生存に有利だから」だそうです。それと同じで、ヒトも「他人と協力しない個体よりも、他人と協力する個体の方が生存する可能性が高いから」協力をするわけです。具体的には、集めた食料を分け合う個体の方が、食料を独り占めする個体よりも、困っているときに助けてもらう可能性が高まり、結果的に生き残りやすいでしょう。

講演では、昨今話題の「おもてなし」について議論になりました。オリンピック招致の最終プレゼンテーションで、「おもてなし」を“日本の魅力”というニュアンスで紹介されていました。確かに「おもてなし」と聞くと、旅館で接客する仲居さんなどが連想され、日本っぽいイメージが強いかもしれません。しかし「おもてなし」は日本人特有のものでしょうか?

結論から言うと、Noです。英語にもhospitalityという語は存在し、アフガニスタンでもおもてなしという概念はあるそうです。これは、国籍や文化に関わらず、私たちヒトに協調する遺伝子が備わっていることから、おもいやりが自然にできるためと考えられます。

※補足※
しかし、「では日本がおもてなしをアピールするのは間違っている」のでしょうか。「世界中でおもてなしが存在するなら、取り立てて日本がおもてなしにおいて優れているわけではないのではないか」と思われるかもしれません。現に未来授業でもそのような議論がありました。
これについてははっきりとした答えは出ませんでしたが、面白いと思った意見として「日本人はおもてなしが自然にできる」「生活におもてなしが埋め込まれている」というものでした。ハイコンテクスト文化という一面があるからかもしれませんが、言葉で伝えなくても相手が察して思いやりを持ち行動をすることが日本では割と自然だと思います。ならば、日本のおもてなしも世界に誇れる文化なのかもしれません。



■ 豊かさとはなにか

未来授業の後半は「豊かさ」とは何ですか、という問いに対する答えを話し合いました。以下は長沼先生が参考図書として指定された「国富論」です。山岡先生の訳で今年度中にはチャレンジしたいと思っていましたが・・・まずはまんがで読んでみたいなと思います(笑)

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参加者からは「自己実現」「笑顔」「余裕」「自己表現」など多くの意見が出ており、とても面白く聞きました。長沼先生は「知足(足るを知る」を挙げられていました。これは老子の「足るを知る者は富むを知る」からのようで、個人的にも大きくうなずけるものでした。

ただ、ディスカッションでよくありがちなのですが、私はなかなか自分の考えがまとまらず、他人の意見を聞いて「なるほど」とどんどん更新されて結論を出すことができませんでした。「よし、これかな?」と思った時には、すでに次の話題に移っており(苦笑)、結局発言することができませんでした。

ということで、ここからは、当日自分が発言できなかったことを書いてみます。

私が豊かだと思うのは、「剰余性」です。剰余性は平田オリザ氏の著書に出てきた言葉で、ある目的を達成するために行う行動「以外」で価値のある行動を指します。例えば、授業中に先生がねらいとは関係のない余談をすることがありますが、その余談も剰余的といえます。またディスカッションの際に「えっと、何を言いたかったか忘れちゃいました」と言って場をなごます時、ディスカッションという本来の目的からはずれているため剰余的です。これら2つの例に共通しているのは、どちらも価値があり、最終的には目的達成に寄与することです。授業中の余談も、集中力の続かない子にとっては興味を持たせるきっかけとなりえますし、ディスカッション中の笑いも、場を暖めて次の意見を出しやすくなるならば価値はあるはずです。

今日では「生産目標」「到達目標」など数字が並べられ、それを達成するための行動を重視し、それ以外を無駄と切り捨てる傾向があるのかもしれません。(世間知らずの学部生には断定はできませんが。)確かに目標を定めてそれに必要な手立てを取ることは効率的といえるでしょう。しかし、時には剰余性を取り入れて、あえて無駄なことをしてみるのもっ必要なのではないでしょうか。むしろ無駄なことをしているときにこそ人は喜びを感じるのではないでしょうか。(余談やディスカッション中の笑いは格好の例かと考えます。)

私がゼミの先生から昔うかがった話ですが、タスク管理にはimportant, urgentの2軸が必要だそうです。

+important, + urgentなことは「目標達成のために必要な行為(重要な仕事)」です。タスク中で最重要なため、期日を定めて行わなければなりません。
-important, + urgentなことは「重要ではなくてもやるべきこと(※仕事)」で、自分にとっては重要ではなくてもやらなければならない事務処理などが含まれます。
もちろん目標達成のためには必要なことですが、これらだけに自分の時間を当ててしまっては、豊かさは得られないように思えます。
むしろ+ important, - urgentな「緊急ではないが、自分にとって重要なこと(※活動)」を生活にいかに取り入れるかが、自分の生活を豊かにするのだと思います。

※仕事、活動はアレントによる用語です。ただ、アレントについては著書を全く読んだことがなく、授業で触れた程度の知識です。ぴったり合う、と思って書いてみたのですが、もし誤っていればご指摘ください。

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(補足)
最近好きなSMAPの曲「JOY」に、こんな歌詞があります。

無駄なことを一緒にしよう忘れられてた魔法とはつまりJOY!JOY!

好きな歌詞なので引用してみました。笑
無駄なことを避けるのではなく、取り入れることに豊かさを感じたいですね(^^)


■ 友人の文章

ちなみに以下は、わたしのゼミの友人が書いた文章です。本人の許可をもらったので、リンク先を貼っておきます。

「目標に受かって-直線に進むことのリスク」~ある学部4年生の述懐/英語教育の哲学的探究2

彼も、本文とは関係のなさそうな「回り道」こそ大切ではないか、という論調で進めています。この記事を書くことにしたのも、彼の文章を今朝読んだことがきっかけだったので、彼には感謝しています。

自分もこれくらい分かりやすい文章が書ければ良いな、とうらやましく思います。彼が深く内省することができ、感性が豊かだからこそこんな文章が書けるのだと思うと・・・

まだまだ修行が足りないですねww

自分も倍返しする勢いで、もっと分かりやすい文章を書けるように訓練します!
(↑いいたいだけ笑)

■ まとめ

「未来授業」全体の感想としては、とても面白かったです。生物学は全くの無知だったので、新鮮な話がたくさん聞けました。議論も途中から熱くなり、多くの人の考えを知ることもできました。(唯一残念だったのは、大テーマ「明日の日本人たちへ~ニッポンの転換点・未来を創る」とのかかわりが薄く感じられたことです。このような大規模なイベントで一貫性を持たせるために必要な大テーマだったと思いますが、少しこじつけている印象を受けました。しかし全体的には満足しています。

このようなイベントも学部の間に多く参加したいです。なにか面白いイベントがあれば、ぜひご紹介ください。

では、ご機嫌よう~!

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