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2023年11月30日木曜日

エッセイ・ライティングを分割して教える

 久々の投稿です。mochiです。皆様、お元気でしたでしょうか。

前回の投稿がコロナ休校期間であったことをみると、実に長い年月放置をしてしまいました。(元々活発に更新する方でもありませんでしたが・・・。)大学時代を過ごした広島県に戻り、現在は中高一貫校で教えています。少しずつ環境の違いにも慣れてきて、手探りですが新しいことにもチャレンジしてみたいと考えています。

これからも時間を見つけて、ぼちぼち更新してみます。最近文章をアウトプットする機会が極端に減ったせいか、読み苦しい文章になっていることをお許しください。

最近の授業実践や関心をまとめてみたいと思います。今回はエッセイライティングについて述べたいと思います。

ここ数年、論理表現について執筆するお仕事をいただき、これまでよりも論理的な表現について考えてきたつもりでした。しかしいざ教壇にたつと難しく、「英語表現」時代の感覚とはアップデートする必要があるなと感じました。(ここについてはおそらく日本中で起きている現象だろうと思います。)今回は、指導要領でも「複数の段落から成る文章」と言われている通り、エッセイライティングについての実践をまとめてみました。

初任校ではエッセイライティングの指導に力を入れていたこともあって、作法は知っていたつもりでしたが、久々のエッセイは面白かったです。

論理表現IIの1学期はセンテンスライティングとパラグラフライティングの導入、2学期はパラグラフをさまざまな話題で書き、<主張+理由+具体例>の形を練習してきました。今月になって初めてエッセイを書く練習をしましたが、今年は次の順序で行ってみました。

◼️単元計画

(パラグラフライティングの指導はすでに終わっているので、ボディの指導は今回は省略をして「エッセイの形式」のみに焦点を当てました。)

1時・・・イントロダクションの書き方

2時・・・コンクルージョンの書き方+ディスカッション1 (Idea Generation)+ライティング

3時・・・読み合い活動+ディスカッション2 (Post-writing)

◼️ 各時のコンセプト

(1) イントロダクションの書き方

イントロダクションの書き方については、広島大学附属の山岡大基先生の「英語ライティングの原理・原則」(テイエス企画)を参考にまとめさせていただきました。

自分が提示したのは、

イントロダクション=背景知識+(ブリッジ+)主張(Thesis Statement)

という枠組みです。イントロダクションの目的を幅広い読者を手に入れることと確認し、そのために必要な流れを書こうという趣旨です。また、ブリッジを含めているライティングの教科書は多くないかもしれませんが、高校生のエッセイを見ていると確かに「急な」イントロによく出会います。そこで、背景知識で広げた内容から、自分の主張に繋げる文を書いてもらいたいと思いこのような形をとりました。

ちなみに山岡先生の著書では、背景知識+ブリッジのみで良いとされており、主張はBodyの第1文に含まれていました。これについては、もしも生徒の書くボディが1段落で済むのであれば、イントロの最終文(Thesis Statement)とボディの第1文(Topic Sentence)がほぼ同一になってしまうために、重複を避けるという配慮なのではないかと推測しています。

自分の授業では最終的に複数段落のボディを視野に入れていたために、イントロダクションでThesis Statementを述べることを求めました。(のちに語りますが、成果は芳しくありませんでした。)

実際の授業では、プレライティングとして「テクノロジーは教育に役にたつ」という趣旨のBodyに繋げるイントロダクションを書いてもらい、各生徒が抱く素朴概念(そもそもイントロとは何か)を表出してもらいました。次に、上記のイントロの構成を伝え、練習問題で背景知識やブリッジの練習をしました。その際に一般論を書くための表現 (These days... / Recently... など)を伝えました。最後にもう一度ポストライティングを行い、イントロの書き方が1時間でどのくらい身についたかを各自に振り返らせました。

(2) コンクルージョンの書き方

コンクルージョンは(時間的制約もあって)①主張を別の言い方で繰り返す、②ボディで出していない情報は追加しない、③ボディで出した内容を長々繰り返すのをやめて抽象的に言い換える、という3点に絞りました。

①「主張を別の言い方で繰り返す」については、Tatami has been getting less popular, so we should preserve tatami for the next generation.という文を、別の言い方で書いてみようというものです。静先生が昔提案されていたEIYOW(=Express In Your Own Words)をエッセイライティングのプロセスで使わせていただきました。生徒の中には、Tatami are important for Japanese people.のような大胆な言い換えもあり、全体共有では発想の多様性は感じ取れたのではないかと思っています。またWordtuneを授業で紹介することもでき、実際に学習に取り入れてみたという生徒の声も聞けました。

②「ボディで出していない情報は追加しない」や③「抽象的な言い換え」は、下手くそなコンクルージョンの例を見せて生徒に気づかせるというやり方にしました。下手なコンクルージョンを見せて「違和感」を持ってもらうという狙いでした。多くの生徒は気づいていましたが、よくよく考えたらエッセイライティングの導入授業では、まずは正しい型を見せた方が良かったのでは・・・とも思っています。

ちなみに、R7~の共通テスト試作問題では、このような誤った構成の文章とコメントから、正しい書き換え表現を選ぶ問題が出されていました。論理表現の授業には親和性が高い問題だな〜と感じたのと同時に、出題者はパターンが限られている中で練り上げるのが大変そうだとも感じました。(また、類似問題の中には「際どい」問題もこれから出るだろうと思い、指導者のライティング観も試されるかもしれません。)


(3) エッセイライティング1「次世代に残したいもの」(エッセイコンテスト)

以上の(1)・(2)を踏まえて、文章を実際に書いてもらいました。お題は「次世代に残したいもの」。まずはディスカッションでお互いのアイデアを話し合ってもらい、自分以外の発想と触れ合ってもらいました。(ディスカッションの指導は2学期を通して継続的に行っているのでここでは省略しますが、いずれどこかの媒体で書きたいと思っています。)

授業の残り時間と自宅で書き上げてもらったエッセイを、授業冒頭で無記名で回収。4人グループにランダムで配布し、誰がかいたかわからない状態で4枚のエッセイを読んでコメントしてもらいました。その後、ディスカッションではエッセイコンテストの審査員になってもらい、Which idea do you like the best and why?というテーマで話し合ってもらいました。ディスカッションではベストアイデアを選んでもらうところまでを求め、最後に全員回収して本人に返却しました。

この活動でのポイントは、「上手なエッセイを選べ」ではなく「良いアイデアを選べ」としたことです。例えばエッセイ自体が上手であっても、似たような文章が並んでいると魅力が下がることもあります。逆に拙い表現であったとしても、アイデアで面白く映れば選べれる可能性もあったわけです。(エッセイライティングの単元としてはそぐわないかもしれませんが、英語が苦手な子もスポットライトが当たってくれれば良いなと思いこのようにしました。とは言いつつ、エッセイがきちんと書けていなければそもそも審査員には伝わらないので、最低限の表現力は必要だよなとは感じつつ。)


◼️授業者振り返り

今回は上のようにエッセイを分割して教えるというやり方をとってみましたが、いろいろと後悔が残るものとなってしまいました。

(1) イントロだけを書くという場面設定

ボディだけを見せてイントロを書くというのは、イントロの形式を教えるという点では良かったものの、そもそもボディをどのくらい丁寧に読めたか勝負という感じが否めませんでした。また、ボディの議論よりも具体的な内容を書いた生徒もおり、不自然な場面設定がうまくはまらなかった子もいたのだなと思いました。

(2) コンクルージョンを書く練習不足

コンクルージョンについては、違和感に気づかせるというやり方はそれなりに通じたと思います。しかし、「ではどのように書けば良いのか」という導きについては、模範解答をみて確認をして終わってしまいました。時間があれば、コンクルージョンを書く練習というのもしてみたかったです。

(3) ボディの指導は不要か

また、「時系列」「因果」「対比」「列挙」などのパラグラフライティングは済ませているのでボディの指導は済ませているという前提で進みましたが、書きづらかった子も多かっただろうと思います。本来は書きたい内容があってアイデアを膨らませてから構成を考えていくわけなので、本時のようなボディ先行型の取り組みはコミュニケーション時代の英語教育に馴染まないかもしれません。時間的な制約から、今回は形式・構成面に焦点化をしました。


いろいろと書きましたが、イントロやコンクルは前任校では、「まあなんとなく書けるよね」というスタンスで書かせていた反省もあったので、今回こうやって1つ1つ丁寧に扱えたのは個人的には面白かったです。また、エッセイコンテストは、「読者」を強制的に作り出す仕掛けとしては面白いなと思いました。真剣に読んでコメントを書く時間は緊張感があり、ディスカッションでも本文に言及しながら賛成・反対をする様子が見られました。

また、「次世代に残したいもの」という話題が、エッセイコンテスト(+ディスカッション)に向いており、こちらが想定しないような答えもたくさん出てきたのが面白かったです!(「外で遊ぶこと」「震災の教訓」「正しい日本語」・・・。)このあたりは教科書執筆者たちの現場を想定した話題設定が功を奏したように思いました。

次のエッセイライティングは、3学期にもう1本、今度は話題の自由度をあげ、卒業制作のような形で取り組ませてみたいなと考えています。また、あえて3学期にもう一度センテンス・ライティングの練習を行うことで、「長い文章を書いてみて、やっぱり文法の練習も必要だと感じたよね〜」という意識づけで学習に取り組んでもらえたら良いなと思っています。また、テクノロジー(機械翻訳・生成AI)の活用についても盛り込んでいこうと考えています。

最近、機械翻訳についての研究プロジェクトで書いた文章も出版されましたので、よろしければご覧ください。