2015年12月28日月曜日

西口光一 (2013) 『第二言語教育におけるバフチン的視点ー第二言語教育学の基盤として』くろしお出版の「対話・対話原理」に関する勉強ノート

mochiです。

最近、対話論にはまっており、ふとM1の頃に買ったこの本を読み返していました。

第二言語教育におけるバフチン的視点-第二言語教育学の基盤として
第二言語教育におけるバフチン的視点-第二言語教育学の基盤として西口 光一

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去年の自分にはちんぷんかんぷんだった箇所も、多少は理解できるようになりました。

思えばバフチンは、ヘーゲルや柄谷行人、バイラム、オープンダイアログなど、大学院で出会った多くの本で繰り返し言及されていました。まだ内実はよく理解できていませんが、少なくともバフチンの言語観で鍵概念とされるいくつかの語(宛名性、ポリフォニー、言語的交通、信号-記号)はだいぶ分かってきました。


以下は、特に第8章の中で重要と思った箇所の書き抜きノートです。


なお、著者の西口先生は、1月に『対話原理と第二言語の習得と教育 ―第二言語教育におけるバフチン的アプローチ』という本を出される予定です。そちらも大変興味深い内容になりそうなので、ご興味をお持ちの方はぜひお読みください。

対話原理と第二言語の習得と教育 ―第二言語教育におけるバフチン的アプローチ
対話原理と第二言語の習得と教育 ―第二言語教育におけるバフチン的アプローチ西口光一

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第8章 対話と対話原理


はじめに

対話原理とは、文字通り人間の社会的な相互行為についての対話的な見方と言うことである。(が、実際はそこまで単純ではない。)

1. 発話の対話的定位
1.1. 対話的定位再考

言語的交通において相手の発話を理解するというのは、信号としてではなく、具体的な脈絡の中において、それに対して然るべき位置を見出してやることである。

「あらゆる理解が、対話性をもっているものです」 (『マル言』pp.226-227) (p.123)

これ以降、「発話」 (yskazyvanie) 3つの特性 (境界性、完結性、対話的定位) について考察する。

1.2 発話の第1特性: 境界性

言語コミュニケーションにおける具体的発話の単位は、話者が交代することにより決定される。

⇒つまり、発話権 (floor) を受けてから相手に渡すまでが一単位ということか。

⇒口頭発話なら分かりやすいが、書き言葉の場合はどのように定義するのだろうか。

1.3. 発話の第2の特性: 完結性

発話の完結性は「すべて言い終えた(あるいは書き終えた)ことで成立する」。 (p.126)

どのような発話であっても、返答することが可能であり、その発話に対して返答の立場を占めることが可能である。そして、返答可能になるには、(i) 意味内容が尽くされている、(ii) 発言の意図・意思が理解できる、(iii) 発話を完成させる構成上・ジャンル上の類型的な形式が観察されること、の3要因が結びついている。

(ii) 我々が発話を聞くとき、相手の発話の意図・意思をすばやく理解し、その発話の全体を察知する。

このコミュニケーションの直接の参加者たちは、状況や選考する発話のなかでみずからを定位しつつ、話者の発言の意図、発言の意思を容易にすばやく把握し、そのことばを耳にするなり、これから展開する発話の全体を察知するのである。 (『ジャンル』p.147) (p.127)

⇒即興対話でも同じようにいえる。他者が発する言葉を理解し、自分がとるべき立場を瞬時に理解し、その発話の行き先を考えながら自分も言葉を発するという関係が二重に(お互い)成り立っているのだろう。

発話を聴く側は、発話の意味を推測しているのではない。むしろ発話そのものを推定しているのである。そしてこの過程は社会歴史的な能力というヒューリスティックによって可能となる。

⇒ウィトゲンシュタインの「ライオン」の言語ゲームの例を思い出す。

1.4. 発話の第3の特性: 発話の対話的定位

文や語は作者を持たない。それが全一な発話として機能することによって、語る個人の立場を表す。(発話の対話的定位)

言い換えれば、「文」や「語」は脱身体化・脱文脈化された抽象的・理念的なラングであるのに対し、「発話」は身体化・文脈化された具体的状況におけるパロールである。

発話の対話的定位は、(i) 対象意味上の課題、(ii) 発話の表情、(iii) 対話的な立場取り、の3つの要因がある。

(i) いかなる発話も対象意味内容の課題(意図)によって第一にジャンルが選択される。(発話の対象定位)

(ii) 表情の要因とは、話者がその発話の対象意味内容にどのような態度を取るかである。

⇒ここまでの話を「時計が壊れた」という文で考えてみたい。「時計が壊れた」という「文」自体には、一切の感情が排されている。この文には悲しみも喜びも憎しみも何も込められていない、中立的-さらにいえば機械的な-文と言える。ところが、一度この文が「発話」として発せられた瞬間、この「発話」には表情が込められる。時計が壊れて残念なのか(「あぁ、彼女からもらった大切な時計なのに」、嬉しいのか(「やった、次の時計を買えるぞ」)、表情豊かなイントネーションが込められる。

(ii) 特に、「イントネーション」は聞き手・言葉の選択・意味づけなども規定する。また、イントネーションは、聞き手に対してと、第三の生きた発話の対象に対してという二つの方向に向けられている。

⇒つまり、イントネーションによって、その言葉の宛て先 (address) が明らかになるし、イントネーションによっては既に使われえない言葉が排除され、意味も排除される。さらに、そのイントネーションは、聞き手に対する表情 (utter to whom) と発話対象 (utter about what) に対して表情を見せるということ。

1.6. 対話的定位の第3の要因: 対話的な立場取り

文体論によって扱えるのは、上の (i) (ii) のみである。しかし実際の発話のスタイルや構成は、はるかに複雑である。

なぜならいかなる発話も、その発話がなされる前に同じ領域で発された発話に対して返答しているとみなされるからである。

発話をするということは、ある場において、自身の発話が何かしらの立場を取る行為である。

⇒以下の一文が面白いが、まだ理解が完全にできていない。

何かについて語るとき、話し手はそれについて語った専攻する諸々の(他者のあるいは自身の)発話の中からいずれかを選んで語る。逆の言い方をすると、一つの発話(外言)は、実際には言われなかった諸々の発話を後に残して行われるのである。 (p.135)

⇒つまり、ある発話を行うということは、それ以前になされた発話と何かしら結びつき、さらにそれ以降になされるであろう発話と何かしら結びつくであろう、ということか。

発話は宛名性 (addressivity) をもつ。

⇒「文」や「語」には宛名がないが、「発話」は作者によってある他者に対して宛てられる。

話し手は、自分の発話を構築するときに、受け手の返答を「能動的に確定しようとする」 (p.137)

⇒能動的に確定しようとする際のメディアは、潜在的にそのコミュニケーションの地平下に隠れている。そのメディアとは、それ以前になされた発話およびそれ以降になされるであろう発話である。一つの発話がなされるということは、そうした潜在的な発話との対話によって生まれるということであり、その意味で多くの声が鳴り響いている (polyphony)


2. 対話的交流と対話原理
2.1. 対話的空間と対話的交流

対話的空間には、多くの(潜在的な)声が鳴り響いている。

言語活動に従事する主体においては、現下の問題あるいは対照についての過去及び先行する様々な発話及びそれに対する応答、そしてそれらの応答に対するさらなる応答などのさまざまな声が、さまざまな意識レベルで交錯し共鳴する対話的な空間が立ち現れる。そのようなポリフォニックな対話的空間にある他の主体はその声を耳にしてその声に対してまた応答するのである。 (p.138)

さらに意識内では、内言として新たなポリフォニックな対話的空間を作り出す。

このように、ことばのやり取りを観察可能な表面として人と人の間で行われる相互的な行為は、実際には、内言としてそこでたち現れるさまざまな声を含めた変化し続ける一つのポリフォニックな対話的空間ともう一つのポリフォニックな対話的空間との間で行われる相互作用なのである。 (p.139)


今後もバフチンに関する勉強は少しずつ続けていきたいなと思います!

2 件のコメント:

  1. 修論の忙しい時期に、インプットを続けるとはさすがやね!書記言語と音声言語の差異に着目するのはとっても面白いと思うな(^^)

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  2. コメントありがとうございます!

    バフチンについては去年から興味はあったのですが、かじる程度で止まっていました。あらためて読み返してみたら、自分の関心に非常に近かったので、2016年はもう少し対話論の勉強ができたらいいなと思っています!(^^)
    先輩の方が詳しいと思いますので、なにかお気づきの点があれば教えてください!

    では、修論頑張ります。笑
    よいお年をお過ごしください!

    返信削除