2016年3月9日水曜日

「リテリング」分類の提案

こんにちは、mochiです。
最近更新をしておらず、久々の投稿となってしまいました。
(サバ君、ニンソラ君、記事を書くように!w)

さて、論文も出し終わり、そして附属学校の授業見学やゼミ合宿、名古屋地区の修論発表会などを終えて、最後のモラトリアム期間を絶賛満喫しております(笑)。

そして4月から始まる新生活に、期待と不安を抱きながら過ごしております...。

さて、この一年ほど、学部や院の友人と一緒に「模擬授業会」という自主勉強会を続けてきました。この勉強会は、模擬授業の練習をしながら「授業がうまくなろう」というのが建前ですが、「大学で習った理論って、そのままは使えないよね~」という(ある意味当然の)前提を確認するという裏メッセージもあります。

最初は少人数(3~4名)で行っていましたが、徐々に増えて、今では学部一年生から院生まで、10名前後で行えることが多くなってきました。

この勉強会をやって一つ良かったのは、異なる学年の大学生が、そして学部生と院生が、学びあうことができたことでしょう。大学院に入って、「学部はまだ授業法を習ってないから」と(若干)遠慮をしていましたが、TAをしながら、自分が「教える」ばかりだけでなく、彼らから「学べる」こともたくさんありました。

今回は、そんな模擬授業会を通じて感じたことを文章にしてみました。最近流行りの「リテリング」に関する雑感です。現段階では粗い概念整理ですので、今後実践を踏まえてもう少し精緻化できたらなと思っています。


■ 「リテリング、サイコー!」

英語教育において「リテリング」が一つの注目の的である。学部の模擬授業や教育実習では、多くの学生がリテリングを最終活動に設定した単元を計画する。

そもそも「リテリング」とは何か。卯城 (2013) では「ストーリーを読んだあとに原稿を⾒ない状態でそのストーリーを知らない⼈に語る活動」と定義されている。読む活動と話す活動の統合型であり、英語授業で多くの教師が取り入れる「音読」の次のステップとして位置づけやすいことからも、リテリング活動は今後注目されるだろう。

しかし、「リテリング」が概念的に十分検討されているとは言い難く、その活動も幅広いバリエーションがある。実際、学部生とディスカッションをしていても、「リテリング」という言葉でイメージしている者が人によって異なるということが何度もあった。(そりゃそうだ!)

そこで、リテリングを礼賛する「リテリング、サイコー!」状態から、もう少し批判的に吟味する「リテリング『再考』」へと橋渡ししてみたい。(これが言いたいだけという感じが否めないw)

分類の観点として、近江 (1988) の「同化-異化」を用いる。


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■「同化」と「異化」

近江 (1988) は「読む」ことを「同化」と「異化」に分類している。これらの分類は翻訳や演劇の世界でも用いられるが、本稿ではリテリングの分類に援用する。本節では両者の違いを説明する。

「同化」とは、読者が筆者の思考・感情の状態で読んだり、想像の世界に自己を投入して登場人物になったつもりで読んだりすることである。たとえば、シンデレラという作品を読む際にも、読者がシンデレラになったつもりで読んだり、シンデレラの作者がどんな思いで作品化したのか思いを寄せたりすることが考えられる。

「異化」は、言語表現を、内容・書き手・書き手の意図との関係から評価しつつ読むことである。たとえば、『シンデレラ』の世界からある程度距離をとって、この作品を批評することが挙げられる。この「批評」という言葉はあまりよく理解されていないように思える。要するに、文章の機能を果たすためにその文章の表現が適しているかを判断することである。批評をするには、読み手が作品の世界に没入しすぎたり書き手に共感しすぎたりしてはならない。適度な距離をとりつつ、作者の意図(目的)を果たすためにその文章に改善点がないかを判断する。

この分類は、作品との距離の取り方や読み手の主体性、批評の有無(コメントの有無)といった観点に基づいている。これを用いて、リテリングを言語活動の一形態と見なし、「まとめ記事用リテリング」「レポーターリテリング」「霊媒師リテリング」に分類する。

■リテリングの3分類

(1) まとめ記事用リテリング(速読・異化型)
第一に、まとめ記事用のリテリングである。たとえば、あるネット記事をスキミング(概要把握のための速読)して大まかな内容さえ理解すれば、まとめ記事を作成することができる。
ここでは、「異化」的に、且つ「浅く」読めば十分リテリングをすることができる。また、要点のみを抑えているため、読み手の主観的コメントを加えることもできるが、必ずしも筆者の真意を踏まえていない場合もある。

(2) レポーターリテリング(精読・異化型)
レポーターは、まとめ記事を作るネットユーザー以上に取材を丁寧に行い、「仲介者」として原文にある内容を客観的に伝えようと心がけるだろう。ただし、「仲介者」である以上、原文世界とはある程度距離をとる。レポーターにも主観的コメントを求められる場合がある。(1) と異なるのは、原文を丁寧に読んでいるために、筆者の真意を踏まえたコメントがしやすいという点である。

(3) 霊媒師リテリング(深い同化型)
最後に、霊媒師リテリングを挙げる。先ほどの分類で言う「同化」であり、読み手が筆者に共感的に(帰化するように)文章を丁寧に読む。ここまでは(2)と似ているが、それを他者に伝達する際に、読み手が書き手(登場人物)になったかのように話す。たとえば人称は “I” を用いられるであろうし、声の出し方やトーンも(1)・(2)とは異なるだろう。また、霊媒師は筆者が憑依したかのようにリテリングするため、読み手の個人的コメントが求められにくい。


■ それぞれの特徴
以上、「同化―異化」という観点から、上のように分類を行った。

(1) まとめ記事用リテリング
・速読⇒(音読)⇒リテリングという活動単位で、比較的短い時間で可能
・テクストは速読用教材同様、学習者が辞書を用いずに読める語彙レベルが理想。
・「じゃれマガ」のような短く平易な英文を用いれば、帯活動でリテリング活動を始めることができる。

(2) レポーターリテリング
・精読⇒音読⇒リテリングという活動。
・どの単元でも用いやすい定番活動のため、モジュール型単元に適している。
(cf. 齋藤 榮二氏『生徒の間違いを減らす英語指導法―インテイク・リーディングのすすめ』)
・読み手の意見を述べる必要があるため、「読んだ内容に基づいた自分の意見を述べる」力を育成することができる。

(3) 霊媒師リテリング
・精読⇒音読⇒リテリングという活動。
・著者のキャラクターが読み取りやすい教材(エッセイ・物語文)の場合は適している。
・原文著者と同化させることに成功した場合、「本文の続きを考えて話しなさい」のような高度な言語活動につなげることも可能。


■ 所感
以上が、リテリングの分類およびそれぞれの特徴である。単に「リテリング」と言っても、これほど多くの言語使用を指示しうることに留意したい。

また、(1)や(2)のようなリテリングはよく研究授業や公開授業で見ることがあるが、(3)のようなリテリングはそもそも実践されているのだろうか。(というより、精読の授業がどのように現場で展開されているのだろうか。)

現場に立ったら「リテリング」を目標に学年計画を立てようとは思うが、個人的には2学期後半から3学期にリテリングができてれいば十分だと思うし、そのためにも音読やインテイクリーディングを丁寧に行い、目的に応じて(1)~(3)を使い分けながら活動デザインをしたい。

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