2015年7月7日火曜日

櫻井よしこ(2014)『議論の作法』文春新書

こんにちは。しばらくぶりの更新となります。Ninsoraです。
最近は研究の傍ら、現場での実践の機会にも恵まれ、忙しくも充実した日々を送っています。

ちなみに最近、自分が現場で感じたことなどをベースに、mochi君や他の学部生・院生を誘って週1ペースでちょっと特殊な(笑)模擬授業会を行っています。
こちらについてもいつかまた時間を見つけて記事を書けたらなと思っています。

積ん読状態の本が増えすぎていたので、最近意識して本を読むように心掛けているのですが、
今回はやっと手に取って読んだ本をご紹介します。

議論の作法 (文春新書)議論の作法 (文春新書)
櫻井 よしこ

文藝春秋 2014-10-20
売り上げランキング : 185499

Amazonで詳しく見る by G-Tools

著者は、日本を代表する論客、ジャーナリストの櫻井よしこ氏。
彼女が議論をするシーンはTVやネットで何度も見たことがあるのですが、とにかく「強い」。本当に強い。
冷静かつ論理的に、時に笑顔で相手を説得していく姿は非常にカッコいいのですが、実際に論争をする場面があったら、怖くて泣いてしまうだろうなと思います。笑

本書はそんな櫻井氏の「議論の強さ」の秘訣を、実際の議論の場面から学ぶ事のできる良書です。
ただ、多少ラディカルな議論も少なくないので、櫻井氏の考えを学ぶというよりも、「問題への斬り込み方や議論の進め方を参考にしよう」ぐらいの気持ちで読んでいく方が気が楽かもしれません。


■ 櫻井流「議論の作法」

櫻井氏は本書冒頭 (p.4) で、以下の5つの「議論の作法」を掲げています。

 ①「事実に」忠実であり続けること

 ②相手の言い分に、十分に耳を傾けること。

 ③自分が正しいと確信していることは譲らないこと。

 ④ユーモアのセンスを忘れないこと。

 ⑤日本人としての誇りを基本とすること。

まず、櫻井氏に関して私が純粋に凄いと感じるのは、その下調べの量というか、知識量の多さです。
事実、本書の中でも櫻井氏は「歴史問題」「環境問題」「教育問題」「憲法問題」などの多岐に渡る問題について、その道のエキスパート達に引けを取らない白熱した議論を展開しています。

中でも櫻井氏は「事実」を大切にした議論を進めることを信条にしておられるようですので、その部分についての妥協が一切ありません。
議論の際の彼女の口からは、本当にスラスラと根拠となる年号だの引用だの出典だのが出てくるんですよね。
映像で見ると余計にその凄さが伝わると思います。

やっぱり人って具体的な根拠とか数字とかを出されると弱いんですよね。
で、それに反論できるのは、別の「事実」しかない。
だからこそ櫻井氏は下調べを大事にされているのかなと思います。
実際、櫻井氏は根拠の曖昧な「事実 (?) 」 に対しては、別の根拠ある「事実」をぶつけて論破していました(怖)

挙げられた「事実」が確かなら、あとはそれに対してどのような斬り込み方(解釈)をするかが議論の本質になってくる訳ですから、「そんな事実は嘘だ!そうに違いない!」という感情的な論で反論するのは、確かに的外れな議論になってしまいますよね。

――――――――――――

…少し話が逸れるかもしれませんが、TVなどを見ていると、時々感情論で議論をしようとする人がいますが、議論云々に関わらず、僕もその点に関しては気をつけなきゃなって思います。
もちろん、感情を一切抜き去った議論はいかにもお役所風と言うか、ロボットみたいで逆に説得力がなくなってしまうように思いますが、感情ばかりになってしまうと議論の落としどころがいつまでも見えず、喧嘩別れみたいになってしまいますよね。

これは議論に限ったことではなくて、人を叱ったり、人と関わって説得したりしようとする場面では常に大切にすべき考え方のような気がします。

結局は「事実に基づく論理性」と「感情」双方のバランスをいかに保つかが大事なんでしょうけど、櫻井氏はこのあたりも凄く上手いんですよね。
「事実」をベースにした冷静な語り口なのに、内に秘めている熱い気持ちがちゃんと伝わる。
こんな風に人を説得できるようになりたいとは思いますが、やっぱり相手となるとかなり怖いですね笑

――――――――――――

また、櫻井氏はまず相手の話をきちんと聞いて、相手の主張、その根拠となる事実をきちんと踏まえたうえでジワジワと反論していきますから(笑)、相手としては武器を奪われた状態で議論を進めなければならなくなります。

このように書くと櫻井氏を悪く言っているように聞こえてしまいますが、着目すべきは彼女の「相手の主張の引き出し方」の巧さです。
彼女が相手から意見を引き出そうとするとき、大抵は「根拠ある事実」を突き付けるか、それをベースにした「具体的な質問」を投げかけます。
この「質問の具体性」というのが恐らく議論を有利に進める際のミソなんだろうなと思います。

例えば、櫻井氏はしばしば

「~についてあなたの意見を聞かせてください」

というざっくりした質問の体を取るのではなく、

「○○年に△△という調査があって、こういう結果になりました。つまりこれは●●ということであり、先ほどあなたの言った△△という意見は、××という点で間違っているのではないですか。」

というかなりの具体性をもって質問をします。

具体的な論拠のある質問に対しては具体性をもって答える必要がありますので、ここで相手は櫻井氏を説得できるだけの具体的な論拠を持ってこないといけない訳です。

つまり、ここできちんと反論できるだけの論拠を持っていないと、単に辟易してしまい、いわゆる「論破された状態」になってしまうのです。

一般に議論においては「質問に答える方がその答えに責任を負う」とよく言われますから、彼女の「相手を具体的に喋らせる質問術」は議論に勝つのにとても理にかなった方法で、この質問の仕方が櫻井氏の強さの秘訣なのかもしれないですね。



■ まとめ

最初にも述べた通り、本書は割とラディカルな議論が展開されているため、本書の登場人物の「思想」や「対立」の部分から何かを学ぶというのには少し慎重になった方がいいかもしれません。
(もちろん、いま議論の渦中にある様々な問題についての教養を得るという点では非常に有益な本だと思います。)

それよりもむしろ、櫻井氏の「議論の強さ」「議論の作法」に触れながら、「どのようにすれば議論を有利に進めていくことができるか」という点に関して学んでいく方が、より多くの人が本書の面白さに気づくことができると思います。

また本書には、議論の場面のみならず、多くの別のコミュニケーション場面や教育現場でも大切にすべきエッセンスが含まれているので、その視点で読み進めてみても面白いかもしれません。

本書の後半では割と「ほっこり」する対談も載っているので、「内容が難しそうだ」と気張らず、肩の力を抜いて是非一読してみてはいかがでしょうか。

お粗末な書評でしたが、お読みいただきありがとうございました。

0 件のコメント:

コメントを投稿