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2013年5月20日月曜日

鳥飼玖美子(2013)『戦後史の中の英語と私』みすず書房



同時通訳で有名で、現在は英語教育会の最前線に立たれる鳥飼玖美子先生の新著である。先生の英語学習歴や通訳歴、また英語教育に携わるようになった経緯などが詳細に記されている。鳥飼先生の名前は「翻訳学入門」の監訳者として伺っていたが、そんな先生が新著を出すということで興味を持ち手に取った次第である。ちょうど英語教育史の勉強にも役立つだろうし・・・という軽い気持ちで選んだが、読み始めると止まらず一日で読みきってしまった。(断っておくが、私は読書は特別に得意ではなく、むしろ苦手なほうである。)

英語教育を専攻されている方にはもちろん、直接関係ない方にも読みやすく伝わるものが多いだろう。このような本書の引用をするのは恐れ多いが、以下の3観点に基づいて紹介したい。


(1)戦後の英語教育史

最近、大学院入試対策のために英語教育史の勉強会を開いている。そこで戦後の英語教育史の流れや教材・指導法の変遷を学んでいるわけだが、本書ではその流れを実際に体験された鳥飼先生が直に語っている。当時の実情がよく伝わるし、何より歴史には記述されないが英語教育に影響を与えた多くの要素もしっかりと記されている。
たとえば、日本の敗戦直後に中学で英語を学んだ國弘正雄氏の英語学習歴を第1章から引用したい。

英語を一生懸命声を出して読んでいるけどね、外国…本国人、ネイティブは身の回りにいないわけでしょう。それから、今と違うからテレビもないし、ラジオの英語番組もないし何もないし、なにしろ英語なんているのは適性語だと、こういう時代でしょう。そうするとね、外国人に、本当に外国の人と英語で一言でも二言でも交わしたいと思うじゃない?中学二年生だけどね。思うじゃない?ところがいないじゃない?どうしたらいいだろうと思った。
そこで中学二年生の國弘少年は考えた末に、「捕虜収容所に行けばいい」と思いつく。(p.13)

國弘氏はそう思い捕虜収容所へ出かけていく。そして出会った1人の外国人に"What is your country?"と聞いてみる。
(本来ならWhere are you from?と聞くのが自然なのだろうが、当時に出てきた表現はこれだったようだ。)
しかし、この表現は見事通じることになる。これが國弘氏にとって「原体験」(p.17)となる。

英語教育史を勉強していても、戦後に出された教科書("Let's Learn English!")やその後出されたオーラル・アプローチ(Fries)といった事項は理解できるが、当時の風景や実態というものはなかなかわかりにくい。しかし、今のようにインターネットや洋書が使用可能ではない時代に、捕虜収容所の存在が英語学習への動機付けの役割を担ったというのはとても興味深い。(少なくとも、1人の少年に英語への憧憬を抱かせたことに変わりはない。)

他にもBeatlesやアポロ月面着陸、沖縄返還などが英語教育(あるいは通訳教育)にどのように影響を与えたかも書かれている。英語教育に携わる者として、もちろん教材や指導法の変遷も大事だが、こういった一つ一つの出来事が英語教育を変えていったことも知っておきたい。



(2)教師論

教師論に関する本は山ほどある。教育実習が終わってからあまりそのような類の本は読むことはなかった。本書はよくある「教師はこうあるべき!」というべき論を前面に掲げるわけでもなく、むしろ読み手の内面からふつふつと情熱を掻き立てるような感じだった。(この辺をうまく表現できないところに自分の表現力のなさを感じてしまう。笑)

当時小学6年生だった著者は、担任の先生に卒業する直前に「意欲を持ちなさい」といわれた。しかし、そういわれてもどのように意欲を出せば良いか分からなかった。本気でやる気を出したのは高校生からで、アメリカ留学を志したことがきっかけだった。つまり先生の「意欲を持ちなさい」という言葉は直接働かなかったことになる。当時の述懐を第6章「教育そして教師というもの」から一部引用する。

小学校を卒業間際に担任教師は私に対し、「中学に言ったら、意欲を持ちなさい」と諄々と説いた。私は素直に頷き、中学生になったらやる気を出すと約束した。しかし私は、中学ではやる気が出なかった。Aクラスに不合格になったのを救ってもらってからはまじめに勉強するようになったが、あれが意欲だったのかどうかは疑問の余地がある。私がやっていたのは、救ってくれた先生の恩に報いるために教科書をちゃんと勉強しただけで、それ以上のことをしたわけではない。では、担任の先生のアドバイスは無駄だったのだろうか。検証したところ中学で目に見える成果が出なかったという意味では、有効ではなかったと判定されるかもしれない。(途中省略)
教育には時間がかかる。そして、教育成果が目に見える形で現れることは少ない。因果関係が明確な科学実験とは違うから、結果はすぐには出ないし、検証も難しい。しかし教育は、本人もその効果を意識できないまま、長年かけて、影響を及ぼす。しかも教育はやり直しがきかない。だから教育は怖い。そして、だからこそ教育は人間にとって大切なのである。(pp.184-186)


では、この教師の実践(「意欲を持ちなさい」と言ったこと)は無駄に終わったのだろうか。結果的に見れば著者は一流の同時通訳者となったわけで、その意欲的な姿は本書に納められている。ゆえに成功と見ることもできる。かといって、直接的に教師の言葉が筆者の意識を変えたわけでもなさそうだ。本箇所から、教育学が科学的手法に頼りすぎてもいけないことが示唆されているようにも思えた。




(3)今日の英語教育へのメッセージ

最近英語教育はよく注目されている。例えば、小学校外国語活動の導入、高校学習指導要領の英語は原則英語での文言、最近ではTOEFLの大学入試導入などがあげられる。これらについて多くの英語教育論者が持論を述べていて、これまで自分はそれらの論を理解して終わりだった。しかし、本書の結びの以下の部分を読み、はっとさせられた。

  今日の日本は、戦時中とはまったく逆の流れになっており、社会をあげて「英語は絶対に必要だ」と思い込み、「コミュニケーションに文法は不要」「受験英語があるから話せない」「大学入試はTOEFL/TOEICにすべき」という思い込みに浸っている。この状況が健全だとは思えない。戦時中の「英語は敵性語」が今や「英語は国際語」となったことは果たして進歩なのかどうか。コインの表と裏のように、主張は一八〇度異なるけれど、社会全体が根拠もなく思い込んでいる、という意味では同じで、本質は変わらないという気がしてならない。
 このような「思い込み」が、いかに危険であるかは、二〇一一年三月一一日大震災とその後の原発の事故で、私たちは思い知ったはずである。
 「思い込み」から脱却するには、個々人が批判的精神を持って、自分の頭で判断をするしかない。空気を読むのではなく、社会を覆っている空気が果たして安全なものであるのかどうか、自分の力で見極めるしかない。「英語は必要だ」という言説は、なるほどと思わせる説得力があるが、それが世界のすべてではない。本当に必要なのかどうか、必要だとして、それはなぜなのか、人に聞くのではなく、自分で確かめなければならない。(p.250)

2003年PISA調査より「批判的思考力育成」という言葉がよく飛び交うようになった。生徒に批判的に思考させるのは大事だが、私たち教育を語る者(学者や専攻者のみならず広く教育に関わる人を含む)こそまずは批判的に私たちの「思い込み」を疑う必要があるのだろう。かく言う自分も無条件に多くの意見をこれまで受け入れてきた。(おいおい!)なので、できるだけ相手の意見を多くの面から見て、長所・短所をバランスよく見極めて自分の判断ができるようになっていきたい。



最後にあくまで個人的な感想だが、著者の英語学習歴の経緯がよく紹介されている反面、その学習法についても知りたかった。どのような英語学習を学生時代に行なわれて、同時通訳者という職業につけたのかは、一人の外国語学習者としても興味があったため、少し残念に思った。しかし、そのような枝葉末節な点は敢えて外されて書かれたのだろう。その点を除けば、戦後の英語教育がどのように展開したのかを知るのには非常に価値のある一冊である。


戦後史の中の英語と私
戦後史の中の英語と私鳥飼 玖美子

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2013年5月14日火曜日

山岡洋一(2001)『翻訳とは何かー職業としての翻訳』日外アソシエーツ


「訳す」という言葉は英語教育では一段特別な意味を持っているように思える。(これは自分にとってのみかもしれないが。)

模擬授業で訳す課題を出して「なぜ訳させたんですか。」と聞かれたことがある。訳させたい箇所があっても発問などの他の方法で意味をとらせるだけにしなければいけないのではないかと考えてしまう。どうも英語教育では訳はあまり好まれない。

その一方で、学習塾では訳が大活躍している。アルバイトをしていると生徒から「訳を教えてください」と尋ねられることも多い。訳させるだけではだめだ、という主張も理解できるが、訳している中で見つかる発見もあるはずだ。例えば、名詞構文を訳すときは、英語で用いられている名詞を日本語では用言の形で訳す。これも日本語と英語の違いを実感する良い機会ではないか。
現実的にも、テストや入試でも下線部訳の問題は依然として出題されている。生徒が訳を欲しがるのも無理はない。



このように訳には多くの問題がはらんでいるようだが、まず「訳」とは何かを再考する必要がある。

そこで登場するのは『翻訳通信』でお馴染みの山岡先生の著書、『翻訳とは何かー職業としての翻訳』である。ここでは「訳す」ことを①英文和訳をすること、②翻訳をすること、に分けている。両者の違いについて、氏は以下のように述べている。

英文和訳の目的はなにか。英文を読む力を教師に示すことである。[...]翻訳の目的はなにか。「原文の意味を伝える翻訳」の目的は、原文を読まない読者に原文の意図や意味を伝えることである。[...]英文和訳と翻訳の違いはこうも表現できる。英文和訳では、原文を読んで、訳す。翻訳では、原文を読んで、理解し解釈し、その内容を日本語で執筆する。英文和訳では英語が中心であり、翻訳では日本語での執筆が中心である。(pp.118-119)

学校のテストや大学入試では、自分の知識を示すための符丁として英文和訳が行われている。確かに、大量の答案を採点しなければならない場面では、このような英文和訳も必要かもしれない。また、長文読解を主眼とした授業では、どのように上手に訳すかという問題は本筋からそれてしまうようにも思える。しかし、もう一つの訳ーすなわち翻訳ーも注目に値するのではないか。

翻訳では、原文の内容を他者に伝えることが重要である。本書でも「翻訳の秘訣、それは完成度の高い日本語で書くようにつとめることである。」(p.108)と言われている。誤解を招くことを承知で書けば、どれだけ原作に忠実でも日本語で読みやすければよい翻訳であり、いくら英文和訳の公式を使って「正しく」訳したとしても、読みにくければ良い翻訳とは言えない。

例えば、イギリスに住んでいる友人から手紙が来たとしよう。自分はそれを読んで意味が分かるが、お母さんや弟はその意味がわからない。その2人に「ねぇねぇ、何て書いてあるの?」と尋ねられたら、あなたはきっと何が書いてあるかを伝えるだろう。これが翻訳の最も身近な例だ。仮にその時、英語の構造に忠実に訳したり、学校で学んだ関係詞の訳出テクニックを用いて言ったとしても、弟には理解できないだろう。むしろイギリスの友人が日本語だったらどのように書くだろうかと考えながら説明した方が、よっぽど分かりやすい説明ができる。




英語教育と翻訳。
大学に入った当初は全く繋がらなかった2つだが、次第に関係があるのではないかと考えるようになってきた。


英語教育の影響は大きい。翻訳者のかなりの部分、そして翻訳学習者の大部分は、「得意な英語を活かせる仕事」として翻訳に興味をもつようになったのだという。なぜ、英語が得意だと考えているかというと、たいていは学校で英語の成績が良かったからだ。なぜ、英語の成績が良かったかというと、よほどすぐれた英語教師に出会ったのでない限り、原語と訳語の一対一対応を素直に受け入れたからであり、英文和訳式の構文に疑問をもたなかったからだ。したがって、翻訳者のかなりの部分、翻訳学習者の大部分にとって、英文和訳調こそが自然なのである。意識して英文和訳調を拒否して「原文の意味を伝える翻訳」を目指さない限り、英文和訳調の方向に流れていく。(p.53)

英文和訳も試験では受験者の力を測る手段となるかもしれない。だが、もし本文の内容を英語が読めない人のために説明するとしたらどのように説明するだろうか、どういったら分かってもらえるだろうか、という発想で日本語を介した英文理解を行うこともあっても良いのではないかと思った。

本書では、翻訳者という職業の現状の厳しさや、翻訳の技術に関する考え方などが分かりやすく説明されている。さすが翻訳者といった分かりやすい言葉づかいで、ぜひ皆さんにも読んで頂きたい。

翻訳とは何か―職業としての翻訳
翻訳とは何か―職業としての翻訳山岡 洋一

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2013年5月8日水曜日

manavee合宿に参加して

ゴールデンウィークが終わりました。みなさんいかがお過ごしでしたか。

大学の友達と「今年はゴールデンじゃなかったね~」「ゴールデンっていうより、茶色とかおうど色みたいな一週間だったね」と話していました。(注:どちらも夏に採用試験等を控えていたので、カフェなどでお互いの勉強をしていました)。その後今年受験を控える高校3年生に「今年のゴールデンウィークどうだった?」と聞いたら「今年はグレーウィークだった。」といってました。笑
おうど色とグレーなら、グレーの方が「大変だったんだろーな」と思い、大学受験の厳しさを改めて実感した次第でございます。

今回はそんな大学受験に関する話題です!

先日、manaveeという団体の合宿に一部参加させていただきました。教育に熱意がある方ばかりで、多くの方と交流させていただきとても貴重な経験ができました。
今日は簡単にmanaveeという活動を(まだ自分も完全に理解しているとは言いがたいですが...)紹介したいと思います。




※自分の主観が交じっていますので、より客観的な説明をお求めの方はmanavee公式サイトへお越しください。


manavee公式サイト


大学受験を4年前に体験した身としてまず言えることが1つあります。それは、受験は情報戦だ!ということです。
過去問の情報量や分析結果、出題傾向に勉強法などは知っているか知らないかによって結果に影響があると思います。また、その情報は環境によってアクセシビリティが異なります。例えば経済的余裕のある家庭ならば、大学受験専門の塾に行って有名講師の授業を受けて対策をすることができ、多くの情報を得られます。その一方で余裕のない家庭では、必ずしも情報が同じように手に入るとはいえません。大学受験の結果がある程度将来に影響しうる現在、このような経済的、地理的格差は見過ごすことができません。

※予め断っておきますが、私は大学受験の結果のみを重要視すべきだとは考えておりません。良い大学に入ったからといってモチベーションも続かずにだらだら過ごすのと第二希望の学校で自分の目標を達成すべく努力するのとでは、後者の方が充実していると思います。しかし、大学の名前でその人の価値が先入観として決まってしまう現実があることも事実です。(先ほどの例で言えば、前者の学生の方が世間的には”優秀”と見られる機会が多いでしょう。)このような現実を踏まえた上で述べているので、読んでいて気分を害された方がいらっしゃいましたら申し訳ありません。

そこでmanaveeでは、大学生が受験対策の授業をビデオで録画して、その授業を無料で見られる環境を提供します。受験生は自分の興味ある授業を選んでみることで、大学受験に必要な情報や知識、スキルなどを得たり磨いたりすることができます。

実際にサイトを見て頂くと分かって頂けると思うのですが、授業も分かりやすいものが多かったり、操作方法も丁寧なコメントで分かりやすかったりと創意工夫に満ちています。このmanaveeの運営や授業スタッフは主に大学生のボランティアによって行われています。東京大学の学生有志による立ち上げで、その後は全国のキャンバスへ活動が広がっているようです。

自分なりにこの活動の長所と短所(課題)を挙げると、

<長所>
・受験生が無料で勉強できる。
・実際に受験を体験した先輩からの授業なので説得力がある。
・授業を行うことで、授業スタッフの授業力も上がっていく。(教員志望者にとっては確かに魅力的です。)
・同じ分野でも多くの講師により授業が行われていることで、生徒が自分の好みの先生の授業を選ぶことができる。


<短所(課題)>
・授業の質を保証しきれない。
・仮に誤った授業内容があってもそれを完全に見つけきることができない。(ただし講師同士のフィードバックシステムは既にあります。)
・分野によってはまだカバーされていない部分もある。
・インターネットが使えない環境では利用できない。
・著作権の問題で授業が行えない分野もある。(現代文や英語長文問題対策など)
・講師と生徒のインタラクションがとりにくい(掲示板を使った交流は行えますが、授業最中のインタラクションが取れないという点はオンデマンド式授業の弱点だと思います。)

これらの点を踏まえた上で、個人的には素晴らしい活動のように思えます。まず、教育格差の活動として理念がはっきりしている点にあります。この活動は教育のタテマエ(公教育)における格差是正ではなく、公教育にカバーできないホンネ(受験)の次元での教育格差に特化しています。ホンネの次元での格差是正は、学習支援ボランティアなどがこれまでにはありましたが、インターネットを使った全国規模の活動は他にはないと思います。(もしあったらすいません><;)海外でもOpen Educationの流れは近年見られますが、日本の大学受験というコンテクストで実現したのも感銘を受けました。

また運営スタッフの皆様も上記の課題は把握されていて、会議を重ねて改善に向かっているそうです。(本当に熱意ある優秀な方々によって行われています!!

自分も大学4年生という立場で、できることは限られてくるかもしれませんが、力になれることはしたいなと思っています(^^)

<参考記事>
Open Educationの広がりについて
梅田望夫・飯吉透(2010)『ウェブで学ぶ ―オープンエデュケーションと知の革命』ちくま新書

2013年5月2日木曜日

ジュリー・バースティン「創造力を育む4つの教訓」





こんにちは。サバンナです。お久しぶりです。実に二か月ぶりの更新!!笑


今回はTEDの動画の紹介です。創造力をはぐくむための四つの教訓をジュリー・バースティンさんが教えてくれます。



創造力を育むということは私の大学生活の中でも大きなテーマであったように感じます。どうにかしてみんなと違うことをしよう、所属している学科の行事で今までになかったことをしたいという思いがありました。
 ジュリーさんは創造力を育むために「経験を受け入れる」、「課題を受け入れる」、「限界を受け入れる」、「喪失を受け入れる」という四つの教訓を提示してくれました。四つの中で特に共感できたのは一番目の経験を受け入れることです。このことについて少し自分のことを振りかえって見ます。


経験を受け入れる
 創造力をはぐぐむために経験を受け入れるということは、自分の解釈でいうと、アイデアの源を自分の経験に頼るということだと考えます。
 私が学科の行事などで企画(ゲームや出し物)を作るとき、それらの中に何か新しいものを取り入れようとするとき、私は今までの自分の体験を振り返っていました。インターネットで自分の知らないもの、新しいものを検索したりもしますが、いいものは見つからず、結局は自分の経験の中で使えそうなもの、アレンジすれば新しいものになるものを検索していました。特に映画というエンターテイメントにはお世話になっていました。ジャッキーチェンやスターウォーズなどは参考となるアイデアがたくさんあります(自分が好きなだけです笑)。
 創造力を高めるためには、日々いろんなことを経験する必要があるのではないかと思って、何でも手を出しそうになります。しかし私は、好きなもの、興味のあるものだけでいいのではないかと思います。なぜなら、嫌いなものや嫌々やっている活動というのはあまり記憶に残らないと思うからです。また、いやなことを継続するのはかなりしんどいことだと考えるからです。嫌いなことを経験だと思ってやることも必要ですが、それを創造力につなげるためにするのはよくはないなと今は思っています。
 


と、またまとまりのない文章を書きましたが、やっぱりTEDに出ている人のプレゼンは惹きつけられますね。17分もずっと動画を見るのって結構しんどいことだと思うけどなぁ。この動画からもいろいろパクろう笑。

2013年4月29日月曜日

千葉晴美(2005)「”意欲”を引き出すマジック・ワード」公人の友社

前回の更新から日が経ってしまいました。最近忙しそうなサバ君ももうすぐ記事を書くようです。サバ君のファンの皆様には申し訳ありませんが、引き続き六角さんが連投させて頂きます。笑

先日堀井先生のNLPワークショップに参加させて頂きました。教育学や心理学といった学問は理論のみならず優れた実践をこの目で見るということが必要不可欠だと感じました。堀井先生はとても優しい方で、お話させて頂いた時も「学ぶことを楽しんで」と心に残るメッセージを頂戴しました。
またワークショップの振り返りも時間を見つけてまとめたいと思います。


というわけで、前回に引き続きNLP関連の書評記事です。
最近お世話になっているフリースクールの先生とNLPに関する話をしていた時のこと。NLPを学んでいても、なかなか実践でどのように用いれば良いかわからないと悩みを打ち明けました。すると先生からこの本を紹介して頂きました。具体的な事例集で、教師として用いる場合のみならず、家族や友達、仕事の先輩後輩とやり取りをする中でもよく見られる場面だったので、非常にイメージしやすかったです。

今回は特に自分が共感した場面を1つだけ取り上げて説明したいと思います。興味のある方はぜひ手にとって頂きたく思います。

森菊江さん「すごいね!頑張っているね!」(p.133)

英語教室に通うAさんという生徒(小3)と筆者の森先生の話です。ある日、Aさんが家で100回CDを聞いて覚えてきたと先生に言います。先生はもちろん褒めて、発表してもらうことになりました。しかし、Aさんは途中でつっかえてしまい、先生のサポートつきでやっと全文を言い終える状態でした。
すると、周りの子から本当に100回も聞いたのか、嘘をついたのではないか、と言われてしまいます。Aさんは涙をこぼします。



さて、ここで教師としてできることは何があるのでしょうか。
・周りの子に「そんなこと言わないの。」と言う
・Aさんに「気にしないで。次上手くいくよ。」と言う
自分だったらこれくらいのことしか考えつかなさそうです。
(生徒が泣いてしまった経験もありますが、頭が真っ白になったことしか覚えていません(;_;))



その時、森先生は以下のように伝えたそうです。

「100回聞いたんだよね!私はあなたを信じるよ。頑張ったね!」

すると、Aさんは泣くのをやめて、それ以来CDを聞くのを続けます。次第に暗唱もできるようになり、徐々に自信がついていったそうです。

この場面を読んで、自分の英会話教室での振る舞いを反省しました。できた子を褒めたり、行動面(暗唱などのパフォーマンスなど)に対して評価をしたりすることはできていても、その子の言葉を信じていると伝えることは自信をもって出来たとは言えません。

教育学では「フィードバック」という言葉があります。生徒のパフォーマンスに対して評価を与えることを指すのですが、ここではむしろ「私はあなたを信頼している」というメッセージを伝えています。そうしてAさんは自信をもって次からもCDを聞いてこれたのです。つまり外面に現れない「内面へのフィードバック」となるのでしょう。外面に見えない分、教師が想像力を働かせる必要がありますが、信頼関係を築くのも内面への働きかけのはずです。自分もこのようなメッセージを恥ずかしがらずに伝えられるようにしたいと感じました。

最後に、森先生の信念が特に現れている以下の箇所を引用したいと思います。

「出来・不出来」、「発音が良い・悪い」、「聴いた回数が多い・少ない」という行動・能力レベルで判断するのではなく、「私はあなたの言う事を信じているよ」、「私はあなたの努力を認めるよ」、「あなたはすごいね!」という「あなたを信用・信頼しているよ」というメッセージを伝えたかったからです。
私は、生徒一人一人の良いところを声に出して伝えることで、生徒が「かけがえのない自分」、「価値のある自分」「夢を持った自分」「人に受け入れられている自分」を発見し、肯定的な自己を形成して行くサポートをしていく人でありたいと思います。(p.134)

このような実践例を読んでも、上手くいったケースを読んでついつい自己満足してしまいがちですが、今回は自分の普段の振る舞いを内省することができました。そして塾や家庭教師などの実践を通して、自分も行動に移せるようにできたらと思います(^^)
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2013年4月9日火曜日

堀井恵(2008)「先生と生徒の心をつなぐNLP理論」三修社

新学期が始まりました。
やはり、朝からの授業にまだ体がついて来ませんね笑
だんだん体を慣らしながら、学部生最後の一年をエンジョイできたらと思います。


今回も書評として1冊の本について論じたいと思います。
2年前に留学していた時に聞いた「NLP」という言葉を思い出して手にとった本です。理論編→実践編という流れがとても分かりやすく、教師を目指す方にはお勧めです。

先にNLPとは何かについて簡単に説明しておきます。NLP(Neuro-Linsuistic Programming:神経言語プログラミング)は、心理学から派生した新しい領域です。

NLPのスキルは意識を変え、問題の見方を変え、望ましい状態を作ります。(p.12)


とあるように、自分が悩んでいるときに考え方を変えて望ましい状態を目指して行動したり、目の前の相手(教師であれば生徒や保護者、同僚など)に対する言葉かけを選んだり立ち振る舞いをコントロールすることで、望ましい結果を得られるようにしたりできます。

自分がこのNLPに興味を抱くようになったきっかけは、もともと自分がコミュニケーションがそこまで得意ではなく、将来生徒に対してどのように接すれば良いかという不安が心にあったことだと思います。本書を読むことで、テクニックを知ることはできますが、残りは普段の生活の中で実践することで体得していくものだと理解しております。

本記事では、NLPに大切な10の原則のうち、「肯定的意図」に関する箇所について述べたいと思います。

"Positive intent : Behind every behaviour is a positive intent."


何か悪さをする子とか、否定的な行動を繰り返す子。それは、結果としては、行動は否定的ですが、その行動の裏側にも肯定的意図があるのです。その肯定的意図を知って、それを満たしてあげることによって、その悪さをしなくなります。その人間の持つ力を生かしていきましょう。(p.19)

人間の行動の裏側には必ず肯定的な意図がある、というNLPの前提があります。肯定的に発想を転換して行くのが、大事なのです。なぜそれらのマイナス行動を取るのかということです。(p.109)


例えば、ある生徒が授業中に友達が問題を解く邪魔をしていたとしましょう。(実際に学習塾などでよく見られる光景です笑)その時はどのような声の掛け方があるのでしょうか。

「こら!何をやっとる!静かにせんか!」
「邪魔をするな。お前はいつもそうだな」

このような声かけはおそらく生徒が一方的に怒られた印象を持ち、関係がこじれたり反抗したりするかもしれません。(「教師学」の"you-message"に近いものがあるかもしれません。興味のある方は調べて見てください。)

代わりにこのような声かけはいかがでしょうか。

「今日はおしゃべりして、どうしたの?」
「さっき邪魔してたけど、本当はどうしたかったの?」

この声かけでは前述のものよりも以下の点で望ましい声かけと言えると思います。
・一時的言語(今日は、今回はのように限定する言葉)を用いているので、生徒の人格否定にはつながりにくい。
・「おしゃべりをした」という否定的な行動の裏側に隠れる肯定的意図を尋ねることで、本当はどうしたかったかを言うチャンスを与えている。

このような声かけをすると、おそらくは「だって◯◯が俺のこと無視したから」とか「◯◯と……の話したかったから」と、かわいらしい理由が聞こえてきそうな気もしますが笑
このような少しの心がけによって、「そっか、◯◯と話したかったのか。でも、先生は今はこの問題を解いて、不定詞の使い方を身につけて欲しいんだ。」と教師も望ましいアウトカムを伝えることができるようになります。否定的な言葉づかいをしないため、生徒も自分がどうしたら良いのかを端的に理解でき、嫌な気持ちをしなくて済みます。

これは更生保護にも関わる考え方で、少年がある非行をしたとしても、その行動のみを見て判断するのではなく、彼が非行をするに至った背景やその非行の”肯定的な意図”を見出すことが我々には求められているように思えます。非行の規模が大きければ大きいほど行動しか目に入らなくなってしまいそうですが、そんな時こそこの原則を忘れないようにしたいですね。

このようにNLPはとても魅力的なものだと思います。







ここまで読んだ方の中には、「そんなにうまくいくか?」と疑われている方もいらっしゃると思います。(実は僕も少し疑いながら読んでいました。)

例えば、仲が完全にこじれた生徒と話すときに、少しNLPのテクニックを用いて話をするだけで、関係が元に戻るのかといえば、実際はそううまくいくものでもないと思います。NLPも新しい領域で、科学的根拠の薄さが批判に挙げられる(と留学先で習いました)こともよく指摘されます。

しかし、教師としてこのような態度を知っておくことは、決して損ではないと思います。現に教師の声の掛け方で学級が蘇った例などもありますし、学習指導がうまくいった例も本書には紹介されています。

賛否両論の分野かもしれませんが、だからこそ一度手にとって読んでみて下さい。特に、最近何かに悩んでいる方にはぜひ読んでいただきたいと思います。




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また、 堀井先生によるワークショップが4/14(日)に広島国際会議場で開催されます。興味のある方はぜひご参加下さい。







2013年4月3日水曜日

藤本一勇(2009)「外国語学」ーなぜ外国語を学ぶかー

私たちはなぜ外国語を学ぶのでしょうか。

日本には多くの翻訳本が出ており、日本語の読み書きさえできれば多くの知識が入れられます。(もちろん学術的に原書を読む必要性は私も日々実感しております。)それに日本にいて外国語を使う機会は極めて限られています。

この質問に対して英語の先生ならなんと答えるでしょうか。「街で外国人に道を聞かれた時にも英語で答えられる」でしょうか。それとも「将来海外で仕事することになった時に困らないように」なのでしょうか。
いずれにいても、私が知っている中学生たちなら即座に「別に道聞かれてもシカトすりゃ良くね?」「てか、日本にいるんだから日本語使えよ」「別に俺は土木だから海外行くことないし」と返してくるはずです。

最近、多くの方とこのような話をするため、最近読んでいる「外国語学」から関係する箇所(主に第二章)を引用しつつ、私なりに考えたことをまとめたいと思います。あくまでも私の恣意的な引用です。(この「恣意的な」という部分も本書では重要な概念になるのですが、それはまた次の話にします。)


■ 言語によって私たちの思考が支配されている

私たちは外部世界をそのものとして、ダイレクトに把握しているわけではない。物理的なことを考えても、私が人間という生物であれば人間という種に自然と備わった肉体(感覚器官)によって、私に与えられる外部世界の情報は工作されている。人間である私たちが見ている聞いている、感じている「世界」は人間の肉体的条件によって与えられたデータの世界であって、外部の生の世界ではない。(p.18)
身体の感性的メディアを第一段階のメディアと呼ぶなら、言語は、身体的条件によって与えられたデータをさらに歴史的・社会的記号によって意味づける第二段階のメディアである。{p.18)

すなわち、私たちが認識している物事や思考は、我々が使っている言語によって影響を受けているということです。サピア・ウォーフ仮説も同じようなことを主張しているが、筆者はこれを言語がもつ「力」としています。
言語が持つ力の例として、国民統一に共通言語が歴史上用いられてきたことが本文では例として挙げられており、他にもフランス語では蛾と蝶が区別されず、同じ単語(Papillon)で表される。しかし日本語ではこの2つの虫は別物として、しかも与える印象が大きく異なるものとして表現します。。この例について氏は以下のようにつけ加えている。

それぞれの言語が別々の仕方で世界を「分節」(articulate=結び目を使って組織化すること)し、意味付けているというだけのこと(p.30)

要するにこの「分節」が私たちの思考に影響を与えるものである。本文中では「物の見方」「新しいメガネ」などという言い換えがなされている。

■ 言語による変身
外国語を学ぶことの効用は、まずは、新しい言語を習得することによって、新しい「メガネ」、新しい物の見方新しい意味世界を獲得できることだろう。私たちの認識は、さらには感性さえもが、言語の表象システムによって知らぬ間に構築されている。「人格」さえ、言語に大きく規定されているかもしれない。(p.39)

例えば、自分は大学1年の頃はとてもおとなしく、そこまで人と関わるのが好きではありませんでした。しかし、2年の頃に留学でイギリスで半年間英語で過ごすと、人と関わるのがとても楽しくなり、それからはサークルやバイトもとても楽しめるようになりました。(当時の友達に聞いても、留学から帰ってきてから付き合いやすくなったと言われますし、先生にも変わったねと言われます。本人にあまり自覚はないのですが…。笑)

これも上の藤本氏の記述で説明がつくのではないでしょうか。すなわち、日本語というOSを通して私はこの20年間外部世界を認識に取り込んできました。しかし英語のみで過ごす経験を通して、英語というOSを用いて新しい「メガネ」で世界を見ることができるようになったのです。(もっとも藤本氏に言わせれば、自分の経験は他にも多くの要因があったに違いないと指摘されることと思いますが。)

そして「私」という人格にも影響を与えて、今はコミュニケーションが好きになったのでしょう。この根拠として、「言語の選択」という章から数カ所引用させて頂きます。

言語を「替える」ことは、発想や行動を「変える」きわめて有効な手段の一つである。(p.41)

外国語を学び、新しい眼差しを手に入れることによって、現状を離脱した新しい「私」に変身する可能性が与えられる。(p.41)

では、一番最初の問いである「なぜ外国語を学ぶのか?」という問いに対して、本書から導き出される示唆を基に自らの言葉で伝えるとするなら、以下のようになります。

(1)日本語のみを用いてこれまで暮らしてきたと思うが、それは日本語で表される”限定された”世界であった。
(2)そこで、英語(あるいは他の外国語)を学ぶことで、新しい世界の見方を得ることになったり、今まで見ることのできなかったものが見えるようになる。
(3)さらに、世界の見方が変われば自分の性格や人格も変わるかもしれない。こうして偉そうに喋っている自分も大学生の頃はだな……(以下長くなるので省略)


もちろん英語教育をよりマクロな視点で見るという意味でも、政治やビジネスの問題とつなげて考えたり、技術的教育観的に「英語により○○できる」という発想をしたりすることも必要です。(むしろ実利的な方が生徒は食いつくようにも思えます。)

しかし、本書で示唆された考え方もぜひ自分は持ちたいと思います。



… …しかーし!!
上記(1)〜(3)の話をしただけでは、私の知っている強者の中高生たちであればさらに反論を重ねてくると考えられる。(例、「てかスマホの翻訳機能使えば一発じゃね?」「そもそも英語とか見ただけで吐き気するしー」笑)彼らに論破されないためにも、そして彼らに英語をやろう!という気にさせるためにも、これからもっと色々なことを考えられたらなと思います。


※追記※
本書は翻訳論の勉強として購入した本なので、いずれ本書で取り上げられる翻訳論についてのまとめ&考察も掲載できたらと思います。

外国語学 (ヒューマニティーズ)
外国語学 (ヒューマニティーズ)藤本 一勇

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