やはり、朝からの授業にまだ体がついて来ませんね笑
だんだん体を慣らしながら、学部生最後の一年をエンジョイできたらと思います。
今回も書評として1冊の本について論じたいと思います。
2年前に留学していた時に聞いた「NLP」という言葉を思い出して手にとった本です。理論編→実践編という流れがとても分かりやすく、教師を目指す方にはお勧めです。
先にNLPとは何かについて簡単に説明しておきます。NLP(Neuro-Linsuistic Programming:神経言語プログラミング)は、心理学から派生した新しい領域です。
NLPのスキルは意識を変え、問題の見方を変え、望ましい状態を作ります。(p.12)
とあるように、自分が悩んでいるときに考え方を変えて望ましい状態を目指して行動したり、目の前の相手(教師であれば生徒や保護者、同僚など)に対する言葉かけを選んだり立ち振る舞いをコントロールすることで、望ましい結果を得られるようにしたりできます。
自分がこのNLPに興味を抱くようになったきっかけは、もともと自分がコミュニケーションがそこまで得意ではなく、将来生徒に対してどのように接すれば良いかという不安が心にあったことだと思います。本書を読むことで、テクニックを知ることはできますが、残りは普段の生活の中で実践することで体得していくものだと理解しております。
本記事では、NLPに大切な10の原則のうち、「肯定的意図」に関する箇所について述べたいと思います。
"Positive intent : Behind every behaviour is a positive intent."
何か悪さをする子とか、否定的な行動を繰り返す子。それは、結果としては、行動は否定的ですが、その行動の裏側にも肯定的意図があるのです。その肯定的意図を知って、それを満たしてあげることによって、その悪さをしなくなります。その人間の持つ力を生かしていきましょう。(p.19)
人間の行動の裏側には必ず肯定的な意図がある、というNLPの前提があります。肯定的に発想を転換して行くのが、大事なのです。なぜそれらのマイナス行動を取るのかということです。(p.109)
例えば、ある生徒が授業中に友達が問題を解く邪魔をしていたとしましょう。(実際に学習塾などでよく見られる光景です笑)その時はどのような声の掛け方があるのでしょうか。
「こら!何をやっとる!静かにせんか!」
「邪魔をするな。お前はいつもそうだな」
このような声かけはおそらく生徒が一方的に怒られた印象を持ち、関係がこじれたり反抗したりするかもしれません。(「教師学」の"you-message"に近いものがあるかもしれません。興味のある方は調べて見てください。)
代わりにこのような声かけはいかがでしょうか。
「今日はおしゃべりして、どうしたの?」
「さっき邪魔してたけど、本当はどうしたかったの?」
この声かけでは前述のものよりも以下の点で望ましい声かけと言えると思います。
・一時的言語(今日は、今回はのように限定する言葉)を用いているので、生徒の人格否定にはつながりにくい。
・「おしゃべりをした」という否定的な行動の裏側に隠れる肯定的意図を尋ねることで、本当はどうしたかったかを言うチャンスを与えている。
このような声かけをすると、おそらくは「だって◯◯が俺のこと無視したから」とか「◯◯と……の話したかったから」と、かわいらしい理由が聞こえてきそうな気もしますが笑
このような少しの心がけによって、「そっか、◯◯と話したかったのか。でも、先生は今はこの問題を解いて、不定詞の使い方を身につけて欲しいんだ。」と教師も望ましいアウトカムを伝えることができるようになります。否定的な言葉づかいをしないため、生徒も自分がどうしたら良いのかを端的に理解でき、嫌な気持ちをしなくて済みます。
これは更生保護にも関わる考え方で、少年がある非行をしたとしても、その行動のみを見て判断するのではなく、彼が非行をするに至った背景やその非行の”肯定的な意図”を見出すことが我々には求められているように思えます。非行の規模が大きければ大きいほど行動しか目に入らなくなってしまいそうですが、そんな時こそこの原則を忘れないようにしたいですね。
このようにNLPはとても魅力的なものだと思います。
ここまで読んだ方の中には、「そんなにうまくいくか?」と疑われている方もいらっしゃると思います。(実は僕も少し疑いながら読んでいました。)
例えば、仲が完全にこじれた生徒と話すときに、少しNLPのテクニックを用いて話をするだけで、関係が元に戻るのかといえば、実際はそううまくいくものでもないと思います。NLPも新しい領域で、科学的根拠の薄さが批判に挙げられる(と留学先で習いました)こともよく指摘されます。
しかし、教師としてこのような態度を知っておくことは、決して損ではないと思います。現に教師の声の掛け方で学級が蘇った例などもありますし、学習指導がうまくいった例も本書には紹介されています。
賛否両論の分野かもしれませんが、だからこそ一度手にとって読んでみて下さい。特に、最近何かに悩んでいる方にはぜひ読んでいただきたいと思います。
先生と生徒の心をつなぐNLP理論 子どもの夢を育むために | |
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また、 堀井先生によるワークショップが4/14(日)に広島国際会議場で開催されます。興味のある方はぜひご参加下さい。
達人セミナーin広島 にて、園元先生が同じようなことをおっしゃっていました。以下は園元先生の資料のまとめです。
返信削除教科指導・学級経営を行う際に、生徒との信頼を築くことが重要である。そのためには教師の聞き方と話し方が重要です。生徒の行動そのものに注意し、教師の思いが伝わる言葉かけをしましょう。その際のポイントは以下の3点です。
1.生徒の行動・事実を非難がましく伝えない
(× だらだらと・ぺちゃくちゃと・周りのことも考えずに)
2.生徒の行動に生徒が困る、嫌だと感じる具体的な理由を提示する
(時間がかかる・授業に集中できない・計画通りに進まない)
3.怒りの下に潜む教師の素直な気持ちを伝える
(悲しい、残念、不安)
学問領域こそ異なれど、現場と研究は、きっと同じ心理を追い求めているわけで、似た答えに辿り着くのかな、なんて思いました。
Ryota Kikkawaさん
返信削除コメントありがとうございます。まさか先輩に読んで頂けるとは思っておらず、とても嬉しいです。
園元先生の講演でのトピックは確か「教師学」から出されたものだったと記憶しています。教師学はトマス・ゴードン博士が提唱したものでしたが、NLPはもともと心理療法士の立場から出された新しい心理学のモデルのようです。
先輩のおっしゃる通り、自分も記事を書きながら気づいたのですが、両者には多くの共通点が存在しているように思えます。教師学は教師のためのコミュニケーションという点が重視されていましたが、NLPはもともと教師のためのものではありませんでした。しかし、このように似ているというのは、コミュニケーションを大事にする両者の立場が近いことにあるのではないかと考えます。特にどちらにも「相手(生徒)の尊重」という点が共通しているため、一方的な「あなたメッセージ」や命令口調を避けるよう示されているのかもしれません。
園元先生の講演や堀井先生の書籍を読んで感じるのは、実践者の声には説得力があるということです。大学・大学院と進む中で、研究しつつも現場(学習塾など)で経験したり、実践者の声を聞きに講演へ参加したりすることを怠らないようにしたいと改めて実感する次第です。
またお気づきの点等ございましたら、ぜひお聞かせ下さい。ありがとうございます。